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[2014/01/10]高校サッカー・富山一/リーグ戦で力つけ頂点ねらう

 

 全国高校サッカー選手権で県代表の富山一が13年ぶりにベスト4に進んだ。11日に初の決勝進出をかけて四日市中央工と対戦する。

 今季の富山一は堅守速攻を基本戦術とした高い組織力が特長。そこには苦しい時間を乗り切る冷静さやたくましさが備わっている。前回の4強以降は8度出場して1勝しか挙げていなかったが、U18プレミアリーグを頂点として整備された高校生年代のリーグ戦体系の中で力をつけ、今回、初の日本一をうかがう位置まで勝ち進んできた。

 

■磨いてきた堅守速攻を発揮

 U18プレミアリーグでハイレベルな戦いを経験してきた強みは、技術や戦術、メンタリティー、選手層のいずれにも発揮されている。

 富山一は2011年から始まったプレミアリーグに初年から参加。10年に北信越プリンスリーグを制して出場権を獲得し、昨年まで3季連続して残留を果たしている。同リーグはタレントぞろいのJクラブのユースチームが多数を占め優勢。昨年は富山一の属する西地区と東地区の計20チーム中11がJクラブのユースだった。毎年各地区の9、10位が降格するため、苦戦している高校勢で3季連続残留したのはほかに青森山田、流通経済大柏、東福岡だけ。この厳しい戦いに生き残るために磨いた堅守速攻が今大会で光を放っている。

 

 守備からゲームの主導権を握り、先制点を奪う試合が続いている。高い位置からプレッシャーをかけてボールを奪い、攻撃につなげている。球際の強さ、攻守の素早い切り替え、ハードワークが徹底されており堅実。前線にロングボールを蹴り込まれてもDFが競ってセカンドボールを拾うという基本通りの対応で、長身選手がいなくてもフィジカルの強い九州勢のFWを抑えた。

 

 攻めでは決定力の高さが目立つ。準々決勝の日章学園戦ではシュート8本で4得点を奪った。大塚一朗監督は「普段からシュート練習をしてきた成果がでた。プレミアリーグで戦っていると(相手が強いため)シュートを打つチャンスは少ない。そこで決めなければ勝ち残っていけないので力を入れて練習してきた」と話す。

 FW渡辺仁史朗選手がDFからのロングフィードを起点に2得点を挙げているが、これもチームとして狙っている速攻パターンのひとつ。今季は渡辺のスピードを生かす攻撃を軸に据えており、DF陣も彼の動きを常に視野に入れながらチャンスをうかがっている。日章戦では相手のミスも絡んだが偶然に生まれたゴールではない。

 

■落ち着いたゲーム運び光る

 チームとしてのまとまり、試合中の落ち着きも大人びている。途中から退場で10人になった1回戦の長崎総科大付戦では、選手たちが監督の指示を待たずにフォーメーション変更を行って守りを固めた。3回戦の市浦和戦ではハーフタイム、前半終了直前の失点に激高する監督を「大塚さん、冷静に」と選手がいさめたそうだ。この試合は相手の地元・浦和駒場スタジアムであり10,379人の観衆が詰めかけたが、MF川縁大雅選手は「アウェイの雰囲気も気にならなかった。苦しい試合を粘り強く戦うのが一高のサッカー」と振り返った。

 「相手の出方などをみて自分たちで試合中にプレーを修正する力がついてきたように感じる」とMF野沢祐弥選手。1-3回戦は1点差の接戦だったが周囲の心配をよそに選手たちは声を掛け合いながら慌てずにプレーを進めていたようだ。

 前回4強時の監督である長峰俊之部長は「Jリーグに内定するような抜けた者はいないが各選手の実力差が小さい。自分たちに力がないことを分かっているから、まとまって戦おうという意識が強く、総合力が高い」とみている。

 

■快進撃支える選手層の厚さ

 大会3得点と活躍しているMF西村拓真選手は愛知県の出身。祖母の住む富山への進学を決めたのはプレミアリーグでプレーできることが動機のひとつだという。

 富山一は今季、Bチームも県U18リーグを制し、北信越プリンスリーグ参入戦に勝って昇格を決めた。今大会の2回戦と準々決勝で出場停止の選手に代わって守備的なポジションで先発した斎拓斗選手は、トップチームでの先発は6月の北信越総体以来だったという。Bチームの一員としてプリンスリーグ参入戦にも出場し、「中心になってチームをまとめる経験ができた」。2回戦でいきなり巡ってきた出場機会に「『ここで負けたらどうしよう』と緊張した」そうだが、身長165cmの小さな体でセンターバックを務めあげて完封勝ちに貢献。部員99人の選手層の厚さを示す象徴的な存在になった。「まだ夢の途中。ここまで来たからには日本一になる」と話している。

 

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