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お知らせ

[2009/02/14]JCYパイロット研修会詳細レポート!

Cimg2041  先日、TSC南木アドバイザーが講師を務めた第5回日本クラブユースサッカー連盟(JCY)パイロット研修会は、全国から集まったクラブユースサッカー関係者のコミュニケーションと問題解決を図る場でもありました。今回は研修会の模様を振り返ります。

 2月7日(土)13時、JCY加藤常務理事(JCY事業委員長)の「やりたいことをやるためにはステップアップしなければならない。10年後、20年後を見据えて勉強しよう」との力強い挨拶で開会した研修会は、日本サッカー協会PHQ部長・登録普及部長、真田幸明氏(JCY理事長)によるセッション1「JFAのヴィジョン~2015年へのロードマップ~」に移りました。

◎セッション1
 JFA日本サッカー協会は「2015年に日本代表が世界トップ10のチームになる」との2005年宣言を実現するため、ユース世代に本格的なリーグ戦文化を浸透させ、短期的な勝ち負けにこだわらないゲーム環境の創出を提唱しています。

Cimg1974  真田氏は「トーナメント戦や短期のリーグ戦では、負けを恐れるあまりに守り中心のサッカーになり、リスクテイクも十分にできない。日本の選手はゲーム経験が乏しくなりがちで、攻撃と守備のバランス意識や、チャンスとピンチの察知能力が育たない」などと解説し、日本選手の具体的な弱点を国際試合を実例に映像で説明。2005年宣言を達成するために日本に突きつけられている課題について理解を促しました。
 総括として真田氏は「リーグ戦創出に於ける5原則」として…

1・各種別とも基軸になるリーグ戦を年間通して行える環境を整える。
 (8~9か月にわたって、20ゲーム程度をバランス良く配置する)
2・リーグ戦は他のどの大会よりも優先してカレンダーを組む。
3・連盟等の大会はこれをリスペクトするが、その開催時期を連盟間で重ねていく。
4・JFA主催の全国大会は、リーグ戦をその母体とする。
5・全国大会はシンプルな形式に戻し、リーグ戦の期間が十分取れるように配慮する。

との理念を提示した上で、長期のリーグ戦の実現には過密状態になっている日程の再調整が不可欠であり、そのために各地区クラブユース連盟は中体連・高体連と緊密に連携するかたわら、運営に忙殺され指導がおろそかにならないよう、知恵を絞るべきとの意見が述べられました。

◎セッション3
Cimg20001  南木氏によるセッション2(総合型地域スポーツクラブについて)に続き、セッション3では事前アンケートに基づいた各地域連盟の課題が発表されました。

・プリンスリーグの日程が過密で、学校の試験期間中でも試合を組まざるを得ない。
・地域内の移動距離が長く、山陰では降雪期間に試合が組めない。
・今後、加盟クラブの数を増やし、「連盟として加盟クラブのために何ができるのか(加盟クラブの発展なくして連盟の発展もない)」との意識をもって活動しなければならない。
・協会登録の分類が「中体連」「クラブチーム」「その他」となっている。勝利にこだわらない「その他」クラブをクラブユースに引き込めないかと思っている。
・連盟のHPが試合結果しか掲載していない。将来ビジョンを共有できず、理解が深まっていかない。
・運営には自前のスポンサー探しが課題。行政まかせではどうにもならない。
・関東にはJクラブの数が多く、「Jクラブ→強豪校→中堅校→Tクラブ(Town Clubの略。非Jクラブの意味)」という序列が出来上がっている。指導者間でもU-18のTクラブの存在が認識されていない。

などの課題が提示され、セッション4以降のグループワークを前に問題意識の共有が行われました。

◎セッション4~6
Cimg20042  セッション3の終了後、翌朝にまたがる形でグループワークと発表がセッション4~6として行われました。参加者を3グループに分け、それぞれ「①クラブと中・高体連、協会、地域との今後のよい関わり方とは? ②各クラブのビジョンから見たクラブユースの将来像は?」の2つのテーマについて議論が交わされました。
Cimg2022  3時間近いグループワークの結果、各グループからは以下のような意見やアイデアが発表されました。

①について
・中・高体連とクラブユースは敵対関係ではなく、同じ子供を育成している仲間である。大人同士が手をつなぎ合うことが大事だ。
・クラブ主催の試合に学校チームを招待する。互いの活動を手伝いあうなどして連携を深める。
・互いに良いリーグ戦文化を作るため、スケジュール調整に力を入れる。学校によってテスト期間や学期制がバラバラなのも是正してほしい。
・審判講習会や指導者養成のプログラムを共有する。

②について
・クラブユースがJリーグ下部組織クラブとその他のクラブで2極化している。Jクラブのための全国大会になりつつある状況に課題を感じる。
・各県や地域の連盟で、指導者講習会などを開催してクラブユースのメリットを打ち出していく。
・全て海外のまねではなく、日本式のやり方を作っていくべき。地域の方々に認めていただけるチーム作りを。
・クラブユースのビジョンを、まず明確にし、しっかり伝えることが大切。研修などに参加しない指導者は絶対にビジョンを理解できない。それを伝えるための行動も起こさなければならない。
・他地域との交流など、定期的な情報交換の場を設けてほしい。

この他にも多くの意見が出され、参加者の真剣さと状況の切実さが伝わってきました。

◎セッション7
Cimg2032  2日目の昼に、NPO法人ワセダクラブ事務局長の後藤禎和氏による講演「大学とスポーツクラブの連携」がセッション7として行われました。早稲田大学ラグビー部OBである後藤氏は、欧米型の地域スポーツクラブを本格的に構築し、自主運営可能なビジネスモデルを作ることを目指して、早稲田大学および地域住民と連携したスポーツクラブを運営しています。
 後藤氏は、大学の持つ体育施設や競技者・指導者など、充実したスポーツ環境に注目し、大学としての社会的使命を果たすために、これらの環境を市民に開放することの意義を解説。大学とスポーツクラブが地域社会・企業・自治体・OB・地元商店街などと連携することによって、自立的なクラブ運営が可能となることを説明しました。大学からは総長や競技スポーツセンターのトップらが理事としてNPOに参画しており、緊密な連携が取られてる様子がうかがえます。
 現在の収益の7~8割は子供へのスクール事業であり、早稲田大学体育会のうち11~12部がスクールに参加しています。例として、サッカーは小中学生約250人のスクール生を抱え、OB会に業務委託を行っていることが示されました。この他にも全国の早大ラグビー部のファンら約750人がサポーターズクラブに入会しており、会の活動を下支えしていることが述べられました。
 後藤氏は「現在、ワセダクラブの活動は初期段階を終え、これから発展するために専有施設の確保や専任スタッフを確保することが求められている」と分析。スクールが軌道に乗ると、会員から「もっと高い技術の伝授を」との声が高まり、質的・量的なニーズを満たしていくためには、大学施設の活用だけでは限界があるとの見解を示しました。
 課題を克服するため、これからは企業・自治体からの「市民・地域に対する貢献・サービス」の一環としての資金獲得や、トップレベルのスポーツチームを有する企業との人材・活動場所に関する連携などを模索しているとの報告がありました。講演の最後に、「日本で初めての成功例を作り上げ、各地へのモデルの伝授・啓発活動につなげていきたい」との抱負が語られました。

◎おわりに
 セッション8の南木氏の講演(プロスポーツクラブと地域の連携)を終え、2日間にわたるパイロット研修会は加藤常務理事の「高円宮杯に参加するだけだったら、わざわざクラブユースサッカー連盟に登録しなくても良いのではないか?という声も出てきている。私たちはいつまでも『大会屋』でいいのか?今後はクラブユースサッカー連盟としてのビジョンをしっかり示し、存在感をPRしていきたい。各地方で頑張ってもらい、『クラブ力』を上げていただきたい」との挨拶で幕を閉じました。
 充実した講演とグループワークを経て、参加者は課題の大きさと、解決に向けた決意を胸に会場を後にしました。今回の研修会を運営され、快く取材の許可を与えていただいたJCY関係者の皆様に御礼申し上げます。

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 研修会が行われた日本サッカー協会には、日本サッカーミュージアムが併設されています。日本サッカー史を振り返る豊富な展示や、日本代表グッズを中心としたショップなどが展開されています。
Cimg19641  その一角に、昨年までのJ加盟33クラブのユニフォームやグッズを展示したガラスケースが設置されています。最も端にある3つのケースには特定のクラブが割り当てられておらず、今年Jリーグに加盟したカターレ富山など3クラブのためのスペースであることがうかがえます。
 こうした場所にも「富山の夢」が結実した姿が出現すると思うと感慨深く、カターレ富山の今後の活躍がますます楽しみになってきました。

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